自動運転技術が実用化されても2t車以下の仕事は人がやる

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巷で話題の自動運転技術ですが、果たして物流業界にどのように影響するのでしょうか?

以下のランキングをご覧ください。

「自動運転」でなくなる20の仕事ランキングから引用

見事に配送ドライバーが入っています。

ですが、このランキングは実際に正しいのでしょうか?

巷で言われる自動運転技術やドローン配達、ロボット配達などでどのように物流業界と人々の暮らしが変わるのか。

今回は自動運転が物流業界にどのように影響するか考えてみたいと思います。

自動運転技術の定義

まず、以下の表を御覧ください。

官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 ~多様な高度自動運転システムの社会実装に向けて~




自動運転技術の定義としてこの表のように5段階に分かれています。

SAEという国際基準でSociety of Automotive Engineersの略ですが、日本はこの国際基準を採用しています。

SAE InternationalーWikipedia

この定義で話を進めたいと思います。




次にトラックの種類も確認します。

全日本トラック協会

かなり細かく分類されています。

また、ワンボックスカーや軽自動車の荷台カテゴリも細分化されていると考えると、「トラック」と一言で言っても様々な種類があることが確認できます。

各トラックの配送物も実に様々です。



建築資材から食品から機械のパーツ、宅配便の継走、重機、エネルギー資源、家畜、水、コンテナなど挙げればキリがありませんし、また各車両が毎日同じルートで運行しているわけでもありません。

同じターミナルから同じターミナルでという運行もありますが、全体で観ると多くもないのです。

トラック運送業における運賃・料金に関する調査結果

現実的な問題

自動運転技術の実用化に当たっての問題は大きく以下の点が考えられます。

交通事故が発生した場合の責任の所在」

「荷物の積み降ろし」


「自動運転技術を導入するコスト」


「産業構造」


「東京一極集中」


「高速道路網の展開の不足」

ひとつづつ考えてみたいと思います。

「交通事故が発生した場合の責任の所在」

自動運転技術を利用して輸送を行い、交通事故が発生した場合に、どこに責任が行くのかという問題があります。

基本的には、「メーカー」と考えるのが妥当と言えます。

これは、当局でもしきりに議論されているようです。

自動運転における損害賠償責任 に関する研究会


自動運転車を作るのは大企業ですから、どう考えてもメーカー側に不利な状況になるような規制や法体系を組むとは考えられません。

日本の交通事故に対する慣習として「弱者救済」を実践してきたわけですから、この問題はかなり難しいと考えられます。

「荷物の積み降ろし」

荷物の積み降ろしについて考えると、これもまた根深い問題があります。

本来、物流事業者というものは「運ぶだけ」の仕事を請け負っていますが、長いデフレーションと競争激化のために過剰サービスを行ってきた現実があります。

荷主側としては、「運送屋は荷降ろしをするもの」と常識として考えていますし、物流事業者側も最早そうせざるを得ない環境です。

つまり、この業界の現場の背景を観ると、自動運転技術が浸透することで、荷主側に不利益が生ずる可能性があるということです。

人間が行っていた時は、積み込みも荷降ろしもやってくれていたのに、自動運転で配送されたらそれらの作業を荷主側で行わなければいけなくなるのであれば、それは、「サービス低下」と荷主は認識するでしょう。

それなら、人がやってくれていたほうが良かったとなることは火を見るより明らかですし、また、ただでさえ低い運賃に更に低い運賃を荷主側が要求する可能性も高いと推測できます。

仮にそのようになったとしたら、新規に自動運転車に投資をする物流業者は出てこなくなるのではと考えるのです。

「自動運転技術を導入するコスト」

物流事業者が、自動運転技術やドローン配達に投資するということであれば、当然投資を実行する前に何年でペイできるかの計画を立てます。

仮に、政府が補助金や助成金を賄うとして物流事業者に負担がなかったとしても、そのメンテナンスや故障などといった対策ができるほどの運賃水準が維持できるのかといった問題があります。

「荷物の積み降ろし」の項でも説明しましたが、荷主にとって「サービス低下」と認識される可能性のある自動運転車が「サービス低下」と認識されないためには、「積み降ろしをも」自動でできるロボットなり、装置が必要となります。


その積み降ろしをする装置ができる段階はおそらく、シンギュラリティが到来してからのような気がしています。

シンギュラリティ」とはいわゆる技術的特異点と言われる、人間のような活動のできる汎用人工知能のことです。

人工知能の権威であるレイ・カーツワイル氏が提唱する概念です。

詳しくは以下のサイトを参照ください。

シンギュラリティ(技術的特異点)とは? 研究者の主張・AIによる仕事の変化




話を戻しますが、これらを踏まえるとシンギュラリティ以前に、あるいは自動運転技術に維持メンテナンスや投資に掛かる未知数のコストを考えた時、果たしてどの程度の規模の物流事業者が投資するのか見当がつきません。

現状、物流事業者は満足な運賃を得られていないとの現実があります。

トラック運送業における運賃・料金に関する調査結果

したがって、できるとしたら自動運転技術に投資する企業は恐らく、外資系大企業を株主に持つ物流事業者に限定されていくのではないかと考えます。

「産業構造」

物流業界の産業構造ですが、利用運送(水屋と呼ばれる仲介者)の規制が少ないことや、二次請け、三次請けなどで実運送業者の運賃が低くなってしまうという問題があります。

下請多重構造は把握しきれていないものの、私が聞く限りでは繁忙期でなくとも五次請けまで行われていると推測しています。

トラック運送分野における大企業ヒアリングの実施結果について

そのような原因があるために、実運送の運賃が低くなってしまいがちになります。

自動運転技術を導入するということは、小さな実運送業者が廃業、大資本に買収、利用運送を飛ばした形で運用される方向になると考えられます。

「東京一極集中」

東京一極集中はまず解消されることはないでしょう。

東京一極集中の問題は昔から言われてきましたが、大きく、「荷待ち」、「渋滞」、「住宅密集地」、「細かい住所」などが挙げられます。

2t車以下の仕事というのはパレット積みもありますが、手積み手降ろしの仕事も多くあります。

現状これらの仕事は、消費者の利益に合わさるように、様々な融通をきかせていることが少なくありません。

自動運転車ではそれらの細かいサービスに応えることはいまのところ不可能であると言えます。

東京一極集中の環境のままサービスの質を落とさずに、2t車以下の配送を実現するには、最低でも東京の人口が極端に減少するとか、都心部一体に大規模な区画整理をしない限り厳しいと思われます。

「高速道路網の展開の不足」

日本の高速道路網は脆弱で台数あたりの長さとしては国際比較でも少ない方のようです。

大型トラックで対応できない荷物は小分けにされ様々な大きさのトラックで配送される場合があります。

それらをチャーター便と言ったりしますが、そのような柔軟性のある仕事が必要になってきますので、やはりしばらくはこのままであると推測できます。

ドライバー不足ではなく運賃不足

よく自動運転技術と同時に語られることの多い「人手不足」という言葉ですが、現実には人手不足ではなく、「賃金不足」であると言えます。

物流業界には様々な事情を持つ人が入ってきます。

他業界をリストラされた人はもちろん、ワケアリの人もいるでしょう。

ですが、未来ある若者が入ってこなくなった大きな原因は、「長時間労働」と「低賃金」です。

運賃が上がり、それがドライバーなど労働者に還元されるような環境が整い、それが周知されれば自ずと人は入ってきます。

自動運転技術も大切なことですが、物流業界が会社の垣根を越えて団結し、そういった環境を作ることが最も重要なことであると私は思っています。

詳しくは過去に記事を書いたので参照してください。

まとめ

というわけで、

「交通事故が発生した場合の責任の所在」

「荷物の積み降ろし」

「自動運転技術を導入するコスト」

「産業構造」

「東京一極集中」

「高速道路網の展開の不足」

を理由として自動運転技術について書いてみました。

自動運転技術が人々の生活に寄与することを切に願います。

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